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「西洋絵画の父」と称される、ルネッサンス黎明期を代表する画家、ジョット・ディ・ボンドーネは、14世紀のイタリアで活躍したゴシック絵画の巨匠です。
ジョット(ジオット)の代表作としては、『荘厳の聖母』や『ユダの裏切り(ユダの接吻)』、『東方三博士の礼拝』などが挙げられるでしょう。
『荘厳の聖母(オニサンティの聖母)』325×204cm
[1310年頃] ウフィツィ美術館所蔵 テンペラ、板
フィレンツェ北部で生まれた羊飼いの少年でしたが、当時の最も高名な画家であった、チマブーエにその才能を見出され、弟子になったと伝えられています。
ジョットとチマブーエについては、色々な言い伝えがありますが、チマブーエが偶然見つけた、ジョットが岩に描いた羊の絵が生きているかのような素晴らしい描写だったため、ジョットの父親にかけあって弟子にした、という話しがあります。
また、有名なエピソードに、チマブーエの留守中にジョットがチマブーエの作品にハエの絵を描き、チマブーエが本物のハエと思って何度も筆で追い払おうとした、というものがあります。
ただし、これらの逸話には疑わしい点も多く、その真偽のほどはわかっていません。
ジョットの絵は、その当時の主流であったビザンティン絵画の因習にとらわれることなく、三次元的な表現や解剖学に基づいた正確な人物描写、人間の喜びや怒り、愛、悲しみ、悪意といった感情表現などが描かれた、非常に画期的なものでした。 こうした写実主義的な絵画様式は、その後のルネサンス期の絵画に大きな影響を与え、宗教画を描く上での基準となったと言われています。
ジョットの最も有名な代表作は、スクロヴェーニ礼拝堂に描かれた、一連の宗教画です。
これらのフレスコ画には、聖母マリアとイエス・キリストの生涯が描かれており、西洋美術史上、最も重要な作品の一つであると位置づけされています。
中でも、『ユダの裏切り(ユダの接吻)』は、絵画様式の変化の激しかったジョットの基準作として重要視され、神の子イエスの凛とした表情と、裏切りを企むユダの醜悪な表示との対比が秀逸な出来栄えであると評価されています。
これらスクロヴェーニ礼拝堂のジョットの連作の中には、有名な『最後の晩餐』もあり、ミュンヘンのアルテ・ピナコテークに所蔵されている、もう一枚の『最後の晩餐』との比較も興味深いものがあります。
スクロヴェーニ礼拝堂の『最後の晩餐』の登場人物の背後に描かれている光背(後光)は、全て黒く塗りつぶされていますが、これは後に他の画家によってなされたものであり、元々はそれぞれの階級に応じた色がつけられていたそうです。
ジョットに関しての記録は大変少なく、その生涯も不明な点が多いです。
また、手がけたとされる作品についても、実際にジョットが描いたものなのか、弟子など別の人間の手によるものではないか、など数多くの謎が残されており、今でも論議の的となっています。
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